マジンガーZのコミカライズ作品
桜田吾作
この名前を聞いて知ってる人はあまりいないと思います。
ちゃんと読める人も少ないんじゃないでしょうか。
「さくら たごさく」ではなく「おうた ごさく」と読みます。
どんな漫画を書いたかというとミラクルジャイアンツ童夢くん(原作:石ノ森章太郎)とか。
でもやっぱりマジンガー3部作、マジンガーZグレートマジンガーグレンダイザーのコミカライズが有名な先生です。
マジンガーZも最初の頃は原作やアニメを忠実に踏襲してはいるのですが、連載が進むにつれだんだんとオリジナル要素をぶち込んできます。
ギャグあり、お色気あり、そしてなにより醜いどろどろの人間模様を子ども向け漫画に入れて、オリジナルやアニメとはかなり別の作品に仕上げてしまったのです。
最初は別冊少年ジャンプ(月刊)で連載を開始いていたそうですが、のちに秋田書店の冒険王に移ったみたいです。
私がリアルタイムで読んでいたのは冒険王になってからでした。
最初に絵を見た時は、本家永井豪に比べて少し幼稚っぽい絵が好きになれませんでした。
「まあ所詮パチモンだし」
私もそんな感じで読んでいました。
子どもってやっぱり絵の上手い下手に左右されますからね。
いま改めて見直すと永井豪よりずっと読みやすい絵だと思います。
そしてなんだかんだで最後まで読み続けていたのは、やっぱり ストーリーも面白かったということでしょうね。
桜田吾作版は欺瞞とうらぎりの人間ドラマ
ドクターヘル
桜田版マジンガーは欺瞞と裏切りの人間ドラマです。
まず悪の主役であるドクターヘル。
とにかく自己中なパワハラ上司で、腹心の部下でさえ信用しない。
そして時には使い捨てのコマのように扱う。
桜田吾作版にはアニメや原作では触れられなかった、ドクターヘルだけの単話の回があります。
ドクターヘルはもともと貧しい家庭に生まれ、母親の愛情も満足に受けられないまま育ちます。
貧乏な上に見た目も良くなく、そのためまわりからも嫌われ、人格形成や性格に異常性が見られました。
しかし皆を見返すために勉強に打ち込み、やがて奨学金で大学へは主席で進学。
後に終生のライバルとなる兜十蔵と出会い、一時は友好関係になった時期がありました。
あ、細かい話ですが三人称がきゃつ(彼奴)なんですね。
私も中学生の頃よく使ってましたw
しかしその兜十蔵とも女性問題で仲違い。
ヘルって常にこんな感じなんです。
承認欲求が満たされないと人間てどんどん変な方向に行くんですね。
あかんあかん、こわいこわい💦
そしてその時ドイツに現れるのはヒトラー率いるナチス!
もう昭和の悪の組織のボスはみんなナチスの系統でしたから。
そしてドイツ敗戦後、バードス島の遺跡調査団に参加。
そこでミケーネ帝国の遺産である巨人兵を発見。
ドクターヘルはこれらを機械獣に改造。
こうして世界征服を決意するのです。
最後にこういうお遊びを入れるところが桜田吾作版のおもしろいところですw
最後は造反、あしゅら男爵
ドクターヘルに忠誠を誓っているものの、ドクターヘルからの評価は無能扱い。
そして同じ幹部でライバルのブロッケン伯爵よりもかなり評価は低い。
そんなあしゅら男爵がとうとうキレて反旗を翻した。
あしゅら男爵はドクターヘルを裏切り、単独で世界征服を企むのです。
あしゅら男爵の作戦は、まず光子力研究所を襲撃しマジンガーZを強奪。
このあと密かにすすめていた、日本列島の火山エネルギーを使って世界中に人工地震を起こすRI作戦。
これらのためにゴーゴン太公の援助、後ろ盾を根回ししています。
けっして一時の感情による暴走ではなく、用意周到な反乱だったことはまちがいありません。
こうして光子力研究所へ自ら先頭で襲撃しマジンガーZを強奪するという、ある意味シンプルで最も効果的な作戦を成功させた。
マジンガー強奪だけにとどまらず、この時さらに兜甲児までも拉致してしまう。
このあとアジトでの兜とのやりとりが面白い。
長年の恨みとして兜を処刑するかと思いきや、仲間になっていっしょに世界を変えようと説得を始める。
その内容がとても子ども向け漫画とは思えない説得力w
いやいや確かにその通りだ、いいこと言うねあしゅら男爵w
21世紀になってこんな日本になるぐらいなら、いっそこの時に兜甲児が日本の指導者になっていれば。
なんてねw
実際、あしゅら男爵の勧誘に甲児もすこし迷っているぞ。
あと一歩だ、あしゅら男爵!
しかし兜甲児の説得にはもうすこし時間がかかりそうだ。
あしゅら男爵は全世界に向けてRI作戦の実行を宣言した。
結局最後はマジンガーにやられちゃうんですけどね。
あしゅら男爵「お願いだ、やめてくれーーーーー」
うわあああ、世界征服まであと一歩だったのに。
結局は主人公にやられてしまう運命の悪役。
この時のあしゅら男爵が本当にシュールです(涙)
応援してたのにー!(いやホントに)
こうして基地が破壊され世界征服の夢が絶たれたあしゅら男爵。
爆破の影響で顔中火傷で焼けただれた上に、部下たちもほとんどが戦死。
生き残った鉄仮面兵士はわずか6人。
彼らも最後までボスであるあしゅら男爵について行く本当にいい部下たちです(涙
なんか大人になって読み返すといろいろ泣けてきて、いつの間にかあしゅら男爵を応援してました。
ドクターヘル、ブロッケン伯爵、あしゅら男爵。
私がこの三人の中から誰かひとり上司を選べと言われたら、まちがいなくあしゅら男爵を選びますw
最後は兜甲児との肉弾戦で敗れ戦死。
最後はドクターヘルに三行半を突きつけたブロッケン伯爵
原作でもアニメでも、あしゅら男爵とはライバル関係であるブロッケン伯爵。
ドクターヘルからの評価は、あしゅら男爵よりはいくらかあるようですが、それでもドクターヘルの腹の中ではブロッケンと言えど所詮はコマのひとつにすぎなかったのです。
もともとブロッケンはドイツナチスの将校で、一度は戦死したもののドクターヘルによって蘇生したという過去があるのです。
その恩があってヘルの部下となったという過去があったのです。
ヘルは自分の保身のためにブロッケン腹心の部下を殺したこともあり、ブロッケン伯爵自身もヘルの人間性はわかっていた。
自分の腹心の部下を殺された、この時のブロッケンの表情がなんともいえない。
いずれヘルは幹部である自分でさえもあっさりきり捨てるだろうと悟った顔。
そしていよいよマジンガーZと最終決戦。
しかしいつも通りマジンガーになす術なく追い詰められていった。
マジンガーZに基地を破壊されパニック状態になったドクターヘルは、ブロッケン伯爵に生身で戦えと無茶振りした。
機械獣でも歯が立たないのに、生身のブロッケンが勝てるわけない。
これはつまりブロッケンに死ねという命令なのです。
そんな命令にキレて、とうとうドクターヘルに三行半を突きつけた。
なんかかっこいいぞ、ブロッケン伯爵!
ワイが辞表叩きつけて会社辞めた時みたいだw
ブロッケン伯爵は操縦席の兜甲児を直接殺そうとするが、最後はパイルダーの防御レーザーにより戦死する。
最後はゴーゴン大公に裏切られる
最後はマジンガーZはドクターヘル軍団を倒すのですが、すぐに闇の帝王率いるミケーネ帝国が侵攻。
このまま話は次のグレートマジンガーシリーズに続くのは、本家アニメや原作通りです。
おっと、原作と少し違うのは最後にドクターヘルを殺したのは主人公ではなく、ゴーゴン太公の裏切りによるものでした。
Dr.ヘルは、腹心の部下だったあしゅら男爵からは造反。
おなじくブロッケン伯爵からも三行半をつきつけられる。
そして最後は同盟関係にあったゴーゴン大公により惨殺。
裏切り、裏切り、また裏切り。
これが桜田吾作版マジンガーZのおもしろさです。
そしてこれは次期シリーズ、グレートマジンガー編にも続くわけであります。
それでは今日はこの辺で。マタンキ